小麦刈り取り順マップ ~衛星画像から小麦の成熟早晩を判定し、刈り取り順番を可視化する~
概要
小麦の刈り取り時期の約20日前から5日程度前までの衛星画像から、小麦の成熟早晩を判定し、刈り取り順番を視覚的に表現したマップを提供する。この地図を利用することで、刈り取り順の客観的な評価が可能となり、以下の効果をもたらすことができる。
①小麦刈り取り計画の効率化
②収穫小麦の低水分、均一化による乾燥コストの削減
③刈り遅れによる穂発芽リスクの低減
北海道内の小麦は、そのほとんどが秋まき小麦(播種:9月中旬~下旬)であり、7月下旬~8月上旬にいっせいに収穫時期を迎える。小麦は収穫期が近づくと水分が低下し、ある一定の水分に低下した時期が収穫適期となる。しかし、適期よりも早期に収穫した場合は強制的に水分を低下させる必要があるため乾燥コストが増大し、適期よりも遅れて収穫した場合は、穂発芽による品質低下の危険性がある。つまり、小麦の収穫は各圃場の水分を把握し、適期を迎えた圃場から収穫することが重要となる。
一方、十勝およびオホーツクでの小麦の収穫は、大型のコンバインを使用して行われる。コンバインは、JA内をいくつかの刈り取り単位で区分された「集団」でそれぞれ管理・利用されている。
従来、小麦の刈り取り順の決定は、集団の代表者が担当する圃場を巡回し、目視や簡単な穂水分調査により決定されていたため、労力や精神的負担が大きく、時には客観的ではない刈り取り順番で収穫していたこともあり、乾燥コストや品質低下を招いていた。そこで、この刈り取り順マップを使用することで、小麦の収穫適期を客観的に把握することができ、適期収穫による乾燥コストの削減、品質確保、更には集団における刈り取り順決定の労力や精神的負担の軽減につなげることができた。
詳細
■リモートセンシング衛星データの活用方法
地上分解能6mのSPOT 6及びSPOT 7の衛星画像を使い、小麦の位置と成熟早晩を判定している。判定の精度は、衛星画像の撮影日が、収穫日に近いほど推定精度が高くなる。
■成功のポイント
・画像撮影時期、マップ必要時期、マップの色つけ方法など、JAからの要望に対して、可能な限り細やかに対応している。
・小麦の収穫適期の推定は、収穫日に近いほど衛星画像の推定精度があがるため、衛星データ提供者と密に連絡をとり、撮影時期を調整している。
・作成したマップデータは必要に応じてGISデータとして出力、提供することが可能。
■利用者やパートナーとの関係
このマップは北海道内のJAからの依頼により作成している。作成したマップは、刈り取り開始前にJAに提供し、JAから刈り取り集団に配布される。刈り取り集団はそれぞれのマップを参考にして、刈り取りの順番を決定し、刈り取りを行う。
小麦の収穫適期の推定は、収穫日に近いほど衛星画像の推定精度があがるため、画像を撮影する日が重要となる。しかし、小麦の生育ステージは、天候により早まったり、遅れたりするため、衛星データ提供者とは密に連絡をとり、撮影時期を調整している。
■波及効果
小麦の刈り取り順番の決定に際し、客観的資料として使用することにより、現場での労力や調整の軽減が図れる。
その他
資料 : 内閣府グッドプラクティス集より引用