高周波通信から違法漁船を監視 ~衛星と高周波通信データから海洋を守る~

概要

登録日:
Oct 10, 2021

HawkEye 360は、衛星コンステレーションの運用によりさまざまな高周波(RF)RFデータを収集している。さらに、海洋用VHF、UHF、Lバンドのモバイル衛星端末、Xバンドの航行支援システム等海洋での通信に関する電波を収集することができる。また、船舶抽出のための独自のアルゴリズムを開発し、RFシグナルから船舶の行動パターンを解析する高度な技術を提供している。

SEAker、RFGeo、RFMosaic

HawkEye 360は、衛星から収集したRFデータを用いて、独自に位置情報を特定する。144MHzから15GHzの間のデータを収集することができ、データ範囲は1,000kmから5,000kmで、解像度は最高500mとなっている。違法漁船監視にはパートナー企業から取得するSARデータとRFデータを組み合わせるアルゴリズムが開発されており、海洋監視に役立てられている。以下、3つのアプリケーションを展開しRF信号を活用した海洋モニタリングサービスを展開している。

SEAker : 船舶の行動監視を行い、不審船からの海洋環境保全を支援するアプリケーション。特徴として、違法船との接触を試みる船舶の検出、多様なRF信仰に基づいた船舶位置  情報の特定、非協力的な船舶の検出、関心海域における自動モニタリング、船舶の活動履歴の可視化、船舶の活動予測、SARデータとの組み合わせによる解析が挙げられる。

RFGeo : RF信号をマッピングするアプリケーション。HawkEye 360が運用する衛星コンステレーションによって収集したデータを利用して目的のRF信号を特定して、マッピングを行う。特徴として、RFエミッタの位置情報の特定、関心海域の定期的なモニタリング、国際VHF、Lバンド、Xバンド、EPIRB、AIS信号などの選別、視覚的なGISユーザインターフェースの提供、位置精度の表示、定義された信号の特定、APIと統合した自動化サービスが挙げられる。

RFMosaic : 関心海域におけるRFアクティビティを評価するアプリケーション。集中的にRF信号が活用されている地域を評価して、通信、防衛、セキュリティ及び緊急時対応のニーズを支援している。特徴として、関心海域内のRF使用率の評価、RF利用に関する時系列評価、潜在的な干渉源の特定などが挙げられる。

詳細

■リモートセンシング衛星データの活用方法

HawkEye 360の衛星は、RF信号の識別と発信位置を生成する。地球観測合成開口レーダ(SAR)データとRF信号データを組み合わせることで、船舶の位置情報や活動パターンを解析している。これにより、船舶活動に関する分析と洞察を強化するデータレイヤーをユーザに提供することができる。AISビーコンを停止した違法船舶でも、航行支援システムの通信や無線などRF信号が発信される。HawkEye 360の衛星はこれらRF信号もとらえることができ、違法船探査の精度向上が図れる。

■成功のポイント

HawkEye 360は、RFデータ収集及びその解析に特化している。違法漁業活動監視においては、SARデータからとらえた船舶の影を解析するのが一般的である。衛星で取得した海上のRFデータとSARデータと組み合わせることで、AISやVMS発信の義務を怠って漁業に従事する船舶(違法業業活動)を解析・監視することができるHawkEye 360の技術はユニークである。HawkEye360は、人工衛星コンステレーション運用を商用向けに確立、展開した企業である。これらの活動により、1億ドルの投資を受けることに成功している。

■利用者やパートナーとの関係

HawkEye 360は、RFデータの他に商用SARデータを組み合わせて違法漁船の監視を行っている。また、RFデータを収集する衛星は、トロント大学(UTIAS Space Flight Laboratory)と協力して開発している。次世代コンステレーションでは15機以上によるコンステレーション運用を目指す。

HawkEye 360の利用者は、政府、市民団体、海洋保安庁など、海洋分野に興味を持っている政府機関や民間団体である。例えば、密輸や違法漁業活動などを行う船の探査や追跡にHawkEye 360の技術が用いられる。RF調査を実施して、スペクトルの利用状況を分析する。防衛及びセキュリティ期間が潜在的な脅威を評価して、海洋の安全を守ることを支援している。HawkEye 360の技術を用いて、緊急ビーコンが発報された船舶の位置を特定することで、速やかな捜索及び救助活動に寄与している。

ビジネスの海外展開のため、HawkEye 360は、海外の企業とパートナーシップを結んでいる。例えば、欧州展開のためにAirbusとパートナー契約を結んでいる。日本国内においては、SNETがパートナーとなって日本でのビジネス展開を進めている。

■波及効果

国際連合食糧農業機関は、違法漁業管理のために約230億ドルの費用がかかると推定している。船舶監視を改善することで、違法漁船だけでなく、密輸、海賊行為などに係るこのマイナスコストを削減することができる。

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