土砂崩れ災害検出など、衛星データのAI解析事業 ~衛星データ解析における様々なタスクに対するAI技術の適用~
概要
衛星データの解析では、これまで熟練の検査員による判読が行われており、災害対応時には広範囲の画像処理や迅速な提供が求められ、非常に負荷の高い業務であった。
Ridge-iは、人手による判読業務負荷の軽減・効率化を目的とし、熟練の作業者と同等程度の水準で、土砂崩れなどの災害を検出するAI解析システムを開発した。少数の画像データから災害箇所を学習したAIと被災していない箇所を学習したAIを二つを組み合わせ、人手を極力介さずに、衛星データを高速・高精度・広範囲で解析できるサービスを構築した。
1)土砂崩れ箇所検知AI
本サービスは、光学衛星データを入力すると、土砂崩れ箇所を自動検出し、該当箇所を表示、提供する。
(※サービス化検討フェーズ)
JAXAからの委託で、地震及び豪雨起因の土砂崩れ事例について、精度検証を実施しており、北海道胆振東部地震ではmIoU約80%という精度を実現している。
従来、熟練の検査員が画像データ一枚あたり数十分かけて目視確認していた作業を、一秒以内で処理することを可能にした。また上記の災害箇所を学習するAI(セマンティックセグメンテーション手法)に加えて、被災の起きてない箇所を学習する別のAI(異常検知ディープラーニング手法)も開発し、同程度の精度で土砂崩れ箇所を検出することにも成功した。二つのAIを組み合わせることにより、少ない学習データでも、AIが高精度に災害箇所を検出できるシステムを構築した。
2)海面上のオイル流出箇所検知AI
本サービスは、海面上を撮影したSARデータ(合成開口レーダ)を入力すると、海面上のオイル流出箇所を高速自動検出し、該当箇所を表示、提供する。これまでのルールベースのシステム*では、オイル流出箇所と波の対流箇所を区別することが難しかったが、オイル流出箇所を学習したAI(セマンティックセグメンテーション手法)によりその問題を解決できる可能性を示した。また、実証実験では、数枚の画像というごく少ない学習データから高精度で流出箇所を検出することに成功した。(※実証実験フェーズ)
詳細
■リモートセンシング衛星データの活用方法
・災害検出分野における衛星データの活用は既に行われているが、人手による業務負荷が大きいことがボトルネックとなっていた。今回、AIによる効率化の可能性を示したことにより、衛星データのより一層の活用が期待される。
・また、雨雲などを透過し、夜間でも観測できるSAR衛星は、気象災害時の緊急観測用途で期待されているが、SARデータは人目では判断が難しく、またルールベースのシステムでは解析しづらいという課題が大きかった。そうした中、AIによりSARデータ判読が自動化できる可能性を示した。
■成功のポイント
・衛星データの解析業務は、広範囲の画像を高速に処理・判読することが求められ、熟練の検査員にとって作業負荷が高い業務であった。AI技術を適切に活用することで、大幅な作業効率化の道筋を示した。
・ルールベースのシステムでは解くことが難しいとされた事例に対して、深層学習の手法を適用することで解析できる可能性を示した。
・弊社独自のノウハウと、二つのAI(災害箇所を学習するAIと、被災していない箇所を学習する異常検知AI)を組み合わせることで、災害事例が少なく、かつ、プロの検査員が作成する正解データが少数であっても、高い精度を実現することができた。
・正解データが増えることで、精度向上の可能性があるシステムとなっており、継続利用により精度が向上していく仕組みを実現しうる。また異常検知AIにより、災害前のデータでも学習することが可能となった。
■利用者やパートナーとの関係
1)顧客のニーズに対して、案件を受託し解析する事業
・「SAR画像による、海面上のオイル流出の検出」(産業総合研究所※スペースシフトとの共同受託)
・「AIを活用した圃場ごとの作付作物解析手法の検討(農林水産省・JAXA)
・「土砂崩れのディープラーニング解析」(JAXA)
2)衛星データ提供者及び利用者と連携して実施する事業
複数の衛星事業者・衛星データ提供者と連携し、AIによる解析により付加価値を高めたデータを損害保険会社やインフラ会社などに提供するサービスの事業化を検討している。(※サービス検討フェーズ)
■波及効果
・深層学習手法を適用することで、各種判読を含む業務の効率化、解析結果の即時提供が可能となる。
・光学やSARデータに加えて、他の地上データ(雨量、地形など)を組合せることで、人間の模倣を越える結果の提供可能性がある。
・基本モデルを変更せずに、学習するデータを変更することで、様々な地域や事案への対応が可能となる。
その他
資料 : 内閣府グッドプラクティス集より引用